『 心にゆとりを持とう。
 我々は今日まで、試合で結果を出すために最大限の努力を重ねてきた。
 試合で勝ちたくない者など誰もいない。
 だからこそ、試合当日は、あえて結果にこだわることはない
 走る前から終わった後の結果を考えるのではなく 
 今自分は何をすべきかだけを考えよう。
 そうすれば結果は、あとから必ずついてくるものだ。 今日一日試合を楽しもう。』 
                          大塚高校駅伝チーム 試合当日のキーワードより


『 もしあなたがプレイを楽しめるならば、全てのプレシャーは、喜びに変わるでしょう。』 ケン・グリフィス

smile.gif(近畿インターハイより)
近畿インターハイ、レース前のスマイル(大塚高校陸上部)

1.メンタルトレーニングとは? 

 <大塚高校駅伝チームが取り組んでいるメンタルトレーニングのねらい>
●コーチに管理されるのではなく、自分の心理面と身体面をセルフコントロールできる自立した選手を目指そう。
●競技を楽しむ余裕と競技に賭ける厳しさを併せ持とう。(リラックスと集中の使い分け)
●常に目標を意識しながら、観察力、予測力、イメージ力、判断力を高めて練習しよう。
●何事においてもマイナス思考を捨てて、プラス思考で挑戦しよう。
●チームメート、コーチ、監督のコミュニケーションギャップを無くし結束力と志気を高めよう。

  国際メンタルトレーニング学会(ISMTE:International Society for Mental Training and Excellence)の概念ではメンタルトレーニングは、
@スポーツ
A教育
Bパフォーマンスアーツ(芸能や音楽関係など)
Cビジネス
D健康(楽しい人生、生活を送るためになど)
などの分野を含んでいますが、このホームページでは特に@のスポーツのメンタルトレーニングを中心に紹介していきたいと思います。

 わかりやすく言うと、メンタルトレーニングとは、「心」「技」「体」のバランスの取れたトレーニングを行って練習の質を高め、試合で120パーセントの力を発揮できるように、精神面の強化を行うことなのです。これは、「精神心」が、「技術」や「体力」と同じように「トレーニング」できるものだ、と言う考えに基づいています。

 ところがメンタルトレーニングというと、何か新しい特別なトレーニングであるように考えられがちです。しかし実際は、多くの1流選手にとっては無意識の内に行っている当たり前のトレーニングなのです。

 メンタルトレーニングが始まったのは1950年代の後半で、旧ソ連や旧東ドイツなどによって発展したと報告されています。これは、心理学者が新しいトレーニング法を編み出したと言うよりは、世界の1流選手について色々調べていくと多くの共通点が見つかり、それを研究、体系化したものがメンタルトレーニングの基礎となったのです。
 その共通点とは、1流選手は

★明確な目標を持って生活、トレーニングしている。
★自分の成功イメージを持っている。
★こんな技術を習得したいという鮮明なイメージを持ってトレーニングしている。
★集中力を高める訓練をしている。
★どんなプレッシャーの中でもリラックスして自分をコントロールできる。
★プラス思考が出来て気持の切り換えが早い。
★予測、実行、反省を常に行っている。
★試合のリハーサルをイメージや練習の中で行っている。

 こうした一流選手の心理的な特長を、体系的にトレーニングすることで誰もが身につけることが出来るようになるのです。

メンタルトレーニングプログラム例>
 1.メンタルトレーニングの歴史や現状とその科学的根拠を理解すること。
 2.スポーツ心理テストによる自己診断(自分の心理的競技能力の長所、短所を知る)
 3.目標設定
 4.リラクセーションのトレーニング
 5.コンセントレーション(集中力)を高めるトレーニング
 6.サイキングアップ(気分ややる気を高める)のトレーニング
 7.気持の切り換え、セルフコントロール
 8.プラス思考
 9.
イメージトレーニング(Vizualization)
10.メンタルリハーサル

それでは、こうしたメンタルトレーニングのプログラムを以下のページで順番に解説していきましょう。


2.メンタルトレーニングの歴史と現状

 上でも紹介したように、旧ソビエトや旧東ドイツでは1950年代にスポーツ選手にメンタルトレーニングが導入され始め、その成果が徐々に報告されるようになりました。ユネスタール( Unestahl, L-E. スエーデン・国際スカンジナビア大学 )の報告では、1980年のモスクワオリンピックの参加者にメンタルトレーニングを取り入れているかどうか調査したところ次のような結果が出たということです。

メンタルトレーニングを実施していた選手の割合
参加者全体 決勝進出者 メダリスト 金と銀取得者
29パーセント 58パーセント 65パーセント 86パーセント

 モスクワオリンピックはアメリカをはじめ、日,英,仏,伊,スウェーデンを含む約60の国々が,ボイコットしたために東欧諸国の参加が中心となった大会でした。1980年当時、特に東欧諸国では、メンタルトレーニングがナショナルチームのレベルで組織的に行われていたのです。
 西洋諸国でもこれに対抗するように、1976年のモントリオールオリンピックを境にしてメンタルトレーニングの研究が進み、アメリカやカナダ、スウェーデンになどを中心に広がりを見せました。1984年のロサンゼルスオリンピックでは、アメリカのメンタルトレーニングがかなりの成果を上げたことが報告されています。
  日本でも、そうした他国のオリンピックでの成果を目のあたりにし、メンタル面の強化が叫ばれるようになりました。しかし日本のスポーツ界では「精神面の強化=根性論」の域を越えず、世界からは大きく取り残されてきました。
 その後世界のオリンピックチームがソウル・バルセロナ・アトランタとメンタルトレーニングを盛んに活用している状況を見て日本でもようやくその重要性が認識されはじめました。現在プロ野球やJリーグの一部のチームでもメンタルトレーニングの導入の動きが見られ始めています。
 外国においては特に北米で1980年後半から盛んになり、今では大リーグ(10チーム以上)をはじめNBAやNHL・NFLなどのプロスポーツで盛んに導入されて成果を上げています。


3.スポーツ心理テストで自分を知ろう

メンタルトレーニングの導入前後に、選手全員にスポーツ心理テストを実施しています。心理テストの目的は、選手自身が自己の心理状態や競技に対する考え方を確認し、自分の心理的な強さや弱点を分析し、これから導入するメンタルトレーニングでどの分野を重点的に強化すべきかを確認することにあります。  
 本校が使用している心理テストには次のようなものがあります。

@心理的競技力診断テストDIPCA2−九州大学健康科学科教授、徳永幹雄、橋本公雄作成
 DIPCA2は、スポーツ選手の心理的な要因を、忍耐力、闘争心、自己実現意欲、勝利意欲、自己コントロール能力、リラックス能力、集中力、自信、決断力、予測力、判断力、協調性の12分野に分けて、それらを様々な質問への解答の仕方で分析するものです。 ★実施の仕方は
1)プリテスト:メンタルトレーニング導入前(1年入学時)に実施。
2)ポストテスト@:メンタルトレーニング基礎編終了後、シーズンイン直前に実施。
3)ポストテストA:メンタルトレーニング中級編導入後、春のシーズン後に実施。

A試合前の心理状態診断検査(DIPS−B.1九州大学健康科学科教授、徳永幹雄作成
 DIPS−B.1は、試合前の心理状態を忍耐度、闘争心、自己実現意欲、勝利意欲、リラックス度、集中力、自信、作戦思考度、協調度、に分けて診断します。
 毎試合ごとに、この心理テストを実施して試合前の自分の心理状態と試合結果を比較していくことにより、どのような心理状態で試合を迎えることがベストなのかが自己判断できるようになります。また試合が近づいた今、自分に何が必要なのかを知ることが出来ます。

B試合中の心理状態診断検査(DIPS−D.2)
 DIPS−D2は、試合後に試合中の自分の心理状態を振り返ってメンタル面と試合結果の関係をチェックしていくものです。

※以上3つの心理テストは、「株式会社トーヨーフィジカル」〒810 福岡市中央区平尾三丁目7−21 圓ビル TEL 092−522−2922で購入できます。

CTSMI(Taikyo Sport Motivation Inventory: 体協競技意欲検査)
 日本体育協会のスポーツ医・科学研究のプロジェクトが作成したもの。選手のやる気を、目標への挑戦、技術向上意欲、困難の克服、練習意欲、情緒安定性、精神的強靱さ、闘志、競技価値観、計画性、努力への因果帰属、知的興味、勝利志向性、コーチ受容、コーチとの人間関係、失敗不安、緊張性不安、不摂生の17の要因で分析しています。
現在、竹井機器工業が版権を持ちコンピューターで分析してくれます。TEL 06−6304−6015

 それでは、実際に本校駅伝チームのメンバーが実施したDIPCA2の結果を紹介しながら考察していきましょう。

図1


図2

表1 DIPCA2総合得点の判断表
判定
(かなり低い)

(やや低い)

(もう少し)

(やや優れている)

(非常に優れている)
男子 141以下 142〜164 165〜186 187〜209 210以上
女子 131以下 132〜154 155〜178 179〜202 203以上

図3


 図1図2図3を見ると2選手とも、プリテストの段階では各心理的要因の得点にかなりのばらつきがあるのに、メンタルトレーニング導入後は、自分の心理面での弱点(例えば、リラックスが苦手、忍耐力がない,等)を徐々に克服して、各心理的要因の調和が計られてきたことが推測されます(グラフが円に近づいている)。

 それではこのような心理テストで見られるメンタル面の変化が実際のレースでどのように発揮されているかを具体的に見てみましょう。上の<図1>で紹介した3年女子B選手の5月と9月の二つの試合の感想文を紹介します。

@メンタルトレーニング導入前のレース(1997年5月5日の地区インターハイ、800M)の感想文
●(W.UPからレース終了までを振り返って)   アップをしだすまで、自分の中でパニックっていた。この前の様な記録会の時みたいな気持ではなかった。急に不安になってどうしていいのか分からなかった。
   W.Upは、試合前ではないかの様に落ちついていた。重くもなかったし、「いける」「いける」と何度も言っていたように思う。 ユニフォームに着替える前、かなり私は皆にはげまされた。心配をしてくれていたようだ。  はげまされると笑顔はでるけどなんだか顔が引きつっていた様な気がする。記録会の時は何でもいいからBEST出したれと、かなり自信があったし、走るのがそんなに怖くはなかったけど 今回は違った。変に緊張していたせいか試合前のトラックでの流しは、すぐ堅いとわかった。  案の定、先生にもそういわれた。自分で気がついているのに、どうすることもできなかった。 4地区のレースが始まって、他の人がゴールするのを見ると、やけにタイムが気になった。私 が走るのは5組。4組が走り始めてから終わるまでいすに座っていたが、体がふるえていた。
 自分がスタート地点に立つと、もう早く走りたいと思った。 走り始めても流しの時と同様動きは堅かった。 200mの通過タイムを聞いて400m通過を66”にするため気持は、あせっていた。それで600mまでいって、ラスト200mの所で切り変えが出来なかった。   今回は反省することが多かったけれど、400m66”前半で通れたこと、1’42”で  600mを通過できたことをプラスとして、これからもやっていきたい。 (原文のまま)
※試合前の本人が立てた目標ラップと実際のラップ(5/5)
距離 200M 400M 600M 800M
予定通過タイム 32” 67” 1’43” 2’18”
実際の通過タイム 30”9 66”0 1’42”2 2’20”7
●5月5日の感想文から見てとれること。 
○他の組の選手のレースとゴールタイムを気にして自分のことに集中できていない。結果を気にしすぎている感じがする。
○レース前に自分が堅くなっていることに気づいているが、どうしたらいいかわからない。
○リラックスしなければとか、400Mを66秒にしなければ、と無理をしている感じがする。自然体を忘れている。
○次の試合に向けてのプラス思考は出来ている。


Aメンタルトレーニング導入後のレース(1997年9月14日の大阪ジュニア、3000M)の感想文
●(W.UPからレース終了までを振り返って)
万博競技場までの道のりが遠く、ちょっとした階段をのぼるのも足が重たくて「本当にいけるんかな?」と思いながらも「走ったら何とかなるやろ」と言い聞かした。 そして「こんなしんどい思いまでしてきたから良いタイム出して帰ろ」と思った。 W.UP行くまでも、足のつっばりが気になる。少し前から、しっかりストレッチ して、ゆっくりしすぎてあわててJOGしに行った。やっばりJOGは足が重い。 不安はあったけれどけっしてマイナス思考にはならなかった。気候も良く走りやす そうだ。さっさと走って早く家に帰ってやろうと思った。やっばり3000Mの試合になるとあんまり緊張せず、他の学校の子と笑って話せた。 スタートラインに立っても 「頑張ろう」と笑いながら話し「位置について」の声がかかった時だけ集中した。走り出すと、4人がばっと前に出て、今日のぺ一ス速いって思った。実はあせっていたけど自分のペースをちゃんと作れた。自分の1000Mの通過が思ったより速くて驚いた。 でも全然しんどくない。前から2人が落ちてきてしめたと思った。なんだか楽しい、いける。笑いが止まらなくてずっと笑っていた。先生は応援で大きな声をあげて熱がこもっている。だけど私はこんなに楽しんでいていいのかというぐらい笑って走っていた。あらそって走っていたけど、レース中私の方が余裕あるわと思って いた。1周、1周過ぎるのがとても早い。 けどラスト1周は、根性が出し切れなくて負けた。BESTが出たうれしさと、 くやしさが混ざった。ラストで負けるのはおかしいと自分にいい聞かせ次の5Kのレースに望みます。
(全て原文のまま)
※試合前の本人が立てた目標ラップと実際のラップ(9/14)
距離 400 800 1k 1200 1600 2000 2400 2800 3000
予定通過タイム 76” 2’35” 3’16” 3’56” 5’19” 6’44” 8’08” 9’30” 10’09”
実際の通過タイム 75” 2’34” 3’13” 3’54” 5’17” 6’43” 8’07” 9’30” 10’10”
●9月14日の感想文から見てとれること。 
○レース前は「足が重い」「本当にいけるんかな」でも「マイナス思考にはならなかった」「何とかなるだろう」「終わったらすぐに帰ろう」→気持の切り換え、プラス思考が出来ている。
○レース直前までスマイル、スターターが「位置について」と言ったときに一瞬で集中出来ている。
→リラックスと集中の切り換えが見事。自己コントロールが出来ている証拠。
○レース中は、レースペースが速いことや、先生(私)が大声で応援していることや自分に余裕があることを驚くほど冷静に観察している。
→観察力、判断力が身についており状況判断が出来ている。

★メンタルトレーニングを導入して変わったこと。
○もちろん正しい体力、技術トレーニングによって競技能力が高まったという背景があるが心理面の強化が進んだことが見てとれる。
○メンタル導入前は「こうしなければ」と気負いすぎていて余裕が無くまわりの状況を判断する余裕があまりない。
○導入後はレース前、レース中の「今の自分の状態」をきちんと受け入れている。「こうしなければ」(リラックスしなければ、このタイムで走らなければ)では無く「今の状況」(足が重い、ペースが速い、先生が興奮している等)を冷静に判断して自然に自分をコントロールしている。
○自己観察力、状況観察力が身についているからきちんとレースの作戦が組み立てられている。→レース前のレースペースの予測と実際の通過タイムがほぼ同じ。
以上のことは心理テストで「自己コントロール」「リラックス」「判断力」「予測力」が伸びていることと一致している。
 
 一方下の図4では、当時1年生の部員が自分の心理的な弱さを克服できずにいる状態が見て取れます。 走力がありながら、ここ一番のタイムトライアルで力を出し切れず、あと一歩のところで正選手になれなかった理由のひとつに 精神面の弱さがあったように思えます。特に1年生は試合経験が少なく2年、3年と時間をかけてメンタル面の強化を図る必要があります。 この選手はグラフからもうかがえるように判断力、予測力が弱いため、今後のメンタルトレーニングでは、 メンタルリハーサル(レース当日の行動や作戦をあらかじめイメージさせ準備する方法)を多く実施して予測力や対応力を強化していくことが必要です。


図4


図5


図6

  図4図5を比較すると正選手と補欠選手では心理面のバランスに差があることがうかがえます。正選手と補欠選手の差は体力の差だけではないようです。また同時期に実施した新入生のプリテストの検査結果(図6)を上級生のポストテストのデータと比較すると、新入生のグラフのいびつさが顕著に読み取れます。新入生は、テストで自分の精神面の弱点を認識し、それを今後のメンタルトレーニングの中で強化していきます。

  スポーツ心理テストを実施する上での注意
1.必ず心理の専門家が作成した標準化された心理テストを用いること。
2.心理的な競技能力とは、個人の固定化された資質ではなく、トレーニングによって向上していくものであることを理解すること。
3.コーチや監督は、どんなことがあっても心理テストを選手選考の道具に使ってはいけない。



4.目標設定(GOAL SETTING)

『目標を持っている人と、そうでない人の差は現時点では、一本の毛先ほどの角度の差である。しかしそれが数年後には信じられないほど大きな差になる。』

『目標を立てた時点で物事は半分成功している。』

『自分が、かくありたい、こうなりたいと願った姿が現在の自分である。』

『努力することは苦しみではない。目標を持っていれば努力することは楽しいことで、目標を持たず、ただそれをこなしているだけの努力は苦しみでしかない。』

★目標設定のポイント
1.目標には必ず達成する期限をもうける。
 →期限のない目標は、夢や願望で終わる。
 →「やせたい」×
 →「4月の終わりまでに1.5kg体重を落とす」○
2.大目標の前に、中目標、小目標を設定する。(ステップ・バイ・ステップ=1歩ずつ)
 →「あせって一気に落とさない。1週間に300gでもよいから落としていこう」○
3.結果目標だけを書かない。必ず、プロセス目標(努力の過程、どんな努力、行動をするか)を書く。抽象的な目標を書かない。何をどう変えたら、どんな行動を取ったら「今の自分」 と 「こうなりたいと思う自分」 との差が埋るのかを考える。行動に結びついた言葉で書く。
 →「やせたい」×←結果
 →「夕食の後に必ず補強運動してから寝る」○←行動
 →「清涼飲料水は野菜ジュースかお茶だけ、唐揚げ、フライは控えめに」○
 →「体重のグラフを毎日つける」○
4.目標が達成できなかった場合でもちゃんと自己受容できますか?(自己受容=自分を否定せず、今の自分を受け入れること) 結果だけで一喜一憂するのではなく、努力の過程をきちんと評価できますか?(世界メンタルトレーニング学会会長テリー・オーリック博士)
 →「あの努力は何だったんだろう。私はなんてだめな奴なんだ。全ておしまいだ」×
 →「レギュラーになれなかったけれど努力した私の価値が下がるものではない。しっかりチームメートの付き添いをして勝利に貢献しよう」○
5.目標が決まったら1日1回、1分で良い、今日の自分の行動が自分の目標に合致していたかをチェックしてみる。
   「今日1日の自分の行動に、あなたはプライドが持てますか?」

<駅伝チームの目標設定の具体例>
目標の期限 目標の種類 最低限度の目標 現実的な目標 夢のようなの目標
卒業までに 結果目標1 全国高校駅伝出場、
5区16分59秒
全国駅伝
5区16分40秒
全国駅伝で区間賞獲得
結果目標2 大阪 I H 優勝
3000m 9分40秒
全国 I H 出場
3000m 9分30秒
全国 I H 賞
3000m 9分20秒
プロセス目標1
(行動を書く)
食事に気を付け貧血防止 間食やめる、
体重○○kg以内
毎日レバーとひじき食べる!
プロセス目標2
(行動を書く)
毎日の練習でスマイルを
忘れない
卒業まで怪我ゼロ
欠席ゼロ
毎日夕食後に補強運動
1時間







結果目標1
結果目標2
プロセス目標1
プロセス目標1



 9月
10月
秋の記録会
結果目標1
結果目標2
プロセス目標1
プロセス目標2



インターハイ
府予選
近畿大会
全国 I H
結果目標1
結果目標2
プロセス目標1
プロセス目標2

★目標は結果の目標だけでなく、そのためにどんな努力をするかというプロセス(過程)目標も書きましょう。
★「夢のような目標」 は自分の可能性の壁を広げるもの。
★自己受容(自分や自分の努力を受け入れること)の大切さ
目標設定は夢の実現への道筋を考えることです。しかし、目標に向かって努力できたかどうかという過程が大事なのであり結果のみにこだわりすぎてはいけません。 満足のいく努力やプレイが出きたのなら、たとえ目標を達成できなかった時でも、自己否定せずに自分と自分のしてきた 努力を認め、また新たな目標に向かって前向きに進んでいくことが大切です。

図2




@
勝ったが
不十分なプレイ
A
勝って
満足のいくプレイ

B
負けて
不十分なプレイ
C
負けたが
満足のいくプレイ
不十分 満足
プレイの質
図1




@
不十分な努力
しかしていなか
ったが勝った。
A
満足いく努力を
して勝った。

B
不十分な努力で
負けた
C
満足いく努力を
していたが負けた。
不十分 満足
努力の質

あなたは、上記の図の@ABC中で、何番を高く評価しますか? その優先順位をつけてみてください。
図1(  )→(  )→(  )→(  )
図2(  )→(  )→(  )→(  )
※ いくら努力しても結果が出ないときは、あなたが力を蓄え目標に近づいているときです。努力の仕方や方法を少し工夫することで、一気に目標が達成されることもあります。 それに反して努力をしていないのに結果が出ているときは、目標から遠ざかっていると思ってください。あなたは手を抜くことをおぼえ、長期的には目標達成から離れていくでしょう。

結果重視の目標設定はバーンアウト(燃え尽き症候群)を招きやすい
★バーンアウトしやすい人
 1.目標が高すぎていつも失敗感を味わう人。
 2.目標が良い結果(1位、2位)を取ることのみにある人。
 3.失敗すると自分の価値が下がると感じる人。 
 4.自分の努力が人との関係で決定されている(人より頑張った。人よりだめだった)と感じる人。
 5.神経質な完璧主義者。
 6.組織的な勝利至上主義はだめ。
☆バーンアウトしないために
 1.バーンアウトはコーチの目標設定の仕方に問題がある。
 2.相手は人ではなく自分であればバーンアウトは起きてこない。
 3.他との関わりより自己の達成度を重視する。内的動機づけ→ 「相手に勝つより、いい相撲をしよう」
 4.自己をコントロールする技術を身につけさせる。
(※上記のバーンアウトについてのコメントは、1998年11月14日に開催された公開シンポジウム「体育系大学における臨床スポーツ心理学の構築に向けて---心と体をつなぐ」において日本大学教授、藤田 厚教授が講演された内容から抜粋したものです。詳しくはメンタルトレーニングの研究会、講習会の案内のページを見てください。)


『人はそれぞれ、顔形が違うように能力が違う。しかし力に差がある選手が同じ陸上部でやっていく。相手との戦いの前に自分との戦い。何も恐れることはない。毎日楽しくやるためには、他人との比較ではなく、昨日より、今日、今日より明日と伸ばしていく。中1の時100M15秒2の子も中3で11秒8で走ったことがある。遅い子は遅いなりに、速い子は速いなりに、これが出発点と思えるかどうか?人と比較する必要はない。強い人も去年の記録にとらわれない。今の自分を確認することが大事。』 
 全国高校女子駅伝3連覇の埼玉栄高校陸上部監督、大森国男先生(現在、京セラ陸上部総監督)から1997年4月5日に直接お聞きした言葉です。



5.プラス思考(Positive Thinking)

 一日の生活、練習、試合での結果の中に、どれだけ「プラスの部分」を見つけられるかです。その日一日の中の最高に良かったことを「ハイライト」と言います。今日は最悪の日だったと思う日でも、何か良いことが一つでも存在していたはずです。それをしっかり見つけて、自分の中で評価してあげられるかです。悪い部分を数え出したらきりがありません。いつもプラスのイメージ、プラスの言葉、プラスの態度で行動していくと、どんどんやる気がわいてきます。
 コーチの立場で考えると、いかに選手の中の良いところを見つけだし、ほめてあげられるかです。ほめられることで潜在意識にはプラスのイメージ「できる! 大丈夫! やれる!」が蓄積し、練習や試合が楽しくなります。マイナス面ばかり指摘されたり、試合で怒られ続けると「どうせできない! だめだ! おもしろくない!」が知らず知らずのうちに潜在意識に根を下ろすのです。
 あるテレビ番組でやっていましたが陸上のコーチが、過去に跳んだことのない高さを高跳びの選手に跳ばせていて、何回も落とすので5cm下げたからと言ってだまして本当は高いままにしておいて跳ばすと、選手は過去に跳んだことがある高さ=「跳べる」と思い込み、実際に自己新記録を出したのです。いかにできる、大丈夫、やれる!!というプラスの思い込みが力を出させるかがわかるエピソードです。



6.リラクゼーション(Relaxation)

★リラクゼーションの定義。「その時、その場における最適な緊張レベルを自分でコントロールできる状態」

  リラクゼーションは、メンタルトレーニングの最も基本的なテクニックです。試合前のプレッシャーを和らげたり、緊張した筋肉をほぐしたり、練習や試合で疲れた心身をすばやく回復させるのに役立ちます。ここではまずリラクゼーションの代表的なテクニックを紹介しましょう。

スマイル:人は緊張するとまず顔がこわばり、それが肩、腕と広がっていきます。スマイルする事によって顔の緊張がほぐれるだけでなく気持も前向きに変わっていきます。スマイルは最も簡単なリラクゼーションの方法です。
☆朝、顔を洗う前に鏡に向かってにっこりスマイル。試合場でもトイレに入ったら必ず鏡にスマイル。
☆頭の中で好きな食べ物や好きな場所、好きな人、好きな音楽などをイメージすれば自然にスマイル出来るように訓練しておきましょう。
☆チームメートやコーチとの間でサインを決めておき、そのサインを見たら必ずスマイル。
☆試合当日は選手の付き添いの者はカメラを携帯してウオーミングアップ中やレース直前の選手にレンズを向けてみましょう。人はカメラを向けられると思わずスマイルしてしまう習性があります。これを利用すればしましょう。
(^_^)V


駅伝当日バスで各中継地点に運ばれる前にそろってスマイル!!

呼吸法:ゆっくりと3つ数えながら鼻から息を吸います。4で止めて5、6,7,8,9,10で口をすぼめてフーと音が出るように強くゆっくり息を吐き出します。息を吸い込むときに空気を頭のてっぺんまで持ち上げて、頭のてっぺんから背骨を通して首、背中、腰と空気をおろしてきて最後はおへその下の丹田に息を吐き切るようなイメージを持ってください。
 ☆呼吸法で使うイメージの例
 @息を吸い込むときに波が満ちてきて、息を吐くときに波が引いていくような感覚。
 A息を吸い込むときに地球の全てのエネルギーを体内に取り入れていくイメージ。
 B息を吐き出すときに体内の疲労や緊張感、不安や恐れなどをすべて捨て去るようなイメージ。

筋弛緩法:筋肉を最大に緊張させた状態と弛緩させた状態を交互に繰り返すことにより、より深いリラックスが得られます。
@鼻から息を吸いながら目を力一杯閉じていきます。こめかみの辺りに力を込めて緊張を感じた後、息を「フー」と吐きながら顔全体をリラックスさせます。
A鼻から息を吸いながら唇をすぼめてキスをするように口をとがらせます。息を止めて唇に力を込めた後息を吐きながらリラックスします。
B鼻から息を吸いながら歯を食いしばり息を止めてあごに力を込めます。次に息を「フー」と吐きながら顔全体をリラックスさせます。
C鼻から息を吸いながら右手を握りしめていきます。爪が手のひらに食い込むくらい力を入れて息を止めます。肘や二の腕にも緊張を感じてください。次に息を「フー」と吐きながら右手をリラックスさせます。(2〜3回))同じことを左手、続いて両手で行います。
D鼻から息を吸いながら両肩を耳の方に向かって持ち上げていきます。肩全体に緊張を感じながら息を止めた後息を「フー」と吐きながら肩から首をリラックスさせます。(2〜3回)
E鼻から息を吸いながら右足のつま先を伸ばしていきます。息を止め右足全体に緊張を感じながら息を止めます。息を「フー」と吐きながら右足全体をリラックスさせます。(2〜3回)
F鼻から息を吸いながら右足のかかとを伸ばしていきます。ふくらはぎに緊張を感じながら息を止めます。息を「フー」と吐きながら右足全体をリラックスさせます。(2〜3回)
G左足そして両足で同じことを行います。
H鼻から息を吸いながら目、唇、あご、両手、両足、おしりの穴に力を込めていきます。息を止めて全身が震えるぐらい力を込めてから「フー」と息を吐いて全身の力を抜きます。
IリッラックスできるようなBGMをかけながら行うとさらに効果があります。
自律訓練法:「心が落ち着いている」などの公式言語をつぶやきながら「重感練習(右手が重い等)」「温感練習(右手が暖かい等)」「額涼感練習(額が涼しい)」を繰り返していく。

☆「国立小児病院」のホームページでは、ネット上で簡単な自律訓練法がオンラインで受けられます。
 試したい方は次のアドレスをクリックしてください。http://allergy.nch.go.jp/Hospital/Shinri/Auto1.htm
 (もし画像が正しく表示されない場合はプラグインソフト Shock Wave & Flash が必要です。Shock Waveをインストールする方は次のボタンをクリックしてください。)
Get Shockwave

※自律訓練法について詳しく知りたい方は、「自律訓練法の実際」 佐々木雄二、創元社 等を読んでください。

◎それぞれのテクニックを行う前後に脈拍を計測してください。うまくリラックスできたら脈拍数が減っているはずです。

★駅伝チームでは上で紹介したテクニックを組み合わせてパッケージ化したものを使っています。
10〜15分(BGM、クラシック音楽:アダージュ、ユーモレスク等)
@仰臥姿勢でセルフマッサージ(頭→顔→肩→腕→腹)    
A続けて腹式呼吸(鼻から息を吸って止める。嫌なことや不安、疲れなどを吐き出すつもりでゆっくり音を立てて息を吐く。)
  回数を重ねるうちに吐く時間を徐々に長くする。
B筋弛緩法(筋肉を最大に緊張させた状態と弛緩させた状態を交互に繰り返すことにより、より深いリラックスを得る。)
 例)息を吸いながら右手を握りしめ最大に緊張させ数秒間息を止めた後、息を吐くと同時に脱力。 
  顔→右手→左手→右足→左足→全身の順で同じことの繰り返し   
C自立訓練法によるリラクセーションと自己コントロール
・重感練習(右手が重い→左手が・・・右足が・・)    
・温感練習(右手があったかい→左手が・・・お腹が・・・)    
・額涼感練習(額が涼しい→頭が冴えてきた・・・) この間絶えず腹式呼吸を繰り返す。
Dその後イメージトレーニング等に移行するか、しばらくリラックスの状態を楽しむ。
E覚醒(一種の催眠状態からゆっくりと現実の世界に戻っていく)
・目を閉じたまま大きく伸びをして、あくびをします。
・頭、肩、両腕、お腹をセルフマッサージして、手足をゆっくり動かします。
・肩を廻しながら上体を起こし準備ができたら、さわやかに目を開けます。

★<リッラクスのヒント>
 うまくリラックスするためには、能動的な注意集中ではなく受動的な注意集中をする必要がある。例えば「リラックスしよう、しよう」と意識的にリラックスした状態を作っていこうとするのは能動的な注意集中である。しかし実際は温泉に行って「さあ、これからこんな風にリラックスするぞ」とイメージしながら温泉につかる人はいないだろう。実際は湯船に身を横たえて、「あー、今日も疲れた」と緊張した手足を伸ばしていくうちに、自然に心身の緊張が解けていく。そして結果的に「あー気持いい」とリラックスした体と心の解放感を味わうはずである。リラックスとは自己受容、その時の心の状態、身体の状態を受け入れることがスタートになる。疲れているのか、肩がこっているのか、緊張しているのか、だらけているのか、今の自分の心と体の状態にじっくり耳を傾けることが、受動的な注意集中である。今の自分を受け入れないで(緊張している自分を否定して)、リラックスや集中を目指してもなかなかうまくはいかない。肩に緊張感を感じたら、まずはそれを受け入れて呼吸法や筋弛緩法などを使って自然に緊張感がほぐれてくるのを待てばよい。リラクゼーションとは、リラックスした結果を指すのではなく、その時、その場における最適な緊張レベルを自分でコントロールできる状態を指すのである。


7.サイキングアップ

 サイキングアップはリラクゼーションの反対の行為です。つまり、気分が乗らなかったり、気持が落ち込んでいたり、弱気になっていたりするときに意識的に自分の緊張を高めて気分を盛り上げていくテクニックです。スポーツの種目によっては、リラックスしすぎていては逆に力が発揮できないものもあります。特に格闘技やラグビーのようなスポーツでは競技の開始前にテンションを上げ、心を戦闘モードに切り変えておく必要があります。
<サイキングアップの例>
・相撲取りが仕切りを繰り返しながら気持を徐々に盛り上げていく。顔をパーンパーンと叩いたり、塩を投げつけたりするのもサイキングアップの一種である。
・競技の開始前に全員で円陣を組み大声で気合いを入れて志気を高めていく。
・アップテンポの曲(ユーロビート系やダンスミュージック等)を聞きながら体を揺すったりして気分を高めていく。
・目をつぶって試合のシーンを思い浮かべてテンションを高める。 

メンタルトレーニングの研究会のメンバーがサイキングアップのためによく使う音楽に映画「ロッキー4」のテーマである「アイオブザタイガー」という曲があります。「ロッキー4」は殺人マシーンのような無敵のボクサーに友人を殺されたロッキーが命を懸けてリングに上がる話ですが、あらかじめ映画を見ておくと音楽を聴いただけで気持ちが高揚してきて「戦闘モード」に入っていけるのです。
 自分にとってどんな音楽がサイキングアップに役立つかを日頃から試しておくと良いでしょう

←「アイオブザタイガー」をお聞きになりたい方は、左のボタンをクリックしてください。

★気持が乗らなかったり、弱気になっているときは、そんなに簡単に自分の心理状態を変えていくことは出来ないこともあります。しかし心は変えられなくてもまず態度(attitude)をコントロールすることはできます。内心は不安で仕方ないときでも堂々と胸を張りヘッズアップして(顔を上げて)歩きましょう。ライバルにあったら「にっこり」微笑んで挨拶しましょう。レースの直前でもスマイルを欠かさず自信満々のポーズを取りましょう。そうしている内に相手が不安そうな表情を見せるかもしれません。態度をコントロールしていると知らない間に自分の心も強気に変化しているのにあなたは気づくでしょう。


8.試合前、試合中の理想的な心理状態とは?

  近畿大学の高妻先生が、メンタルトレーニングを指導した選手やチームに、「試合で最高能力を発揮できたときは、どのような心理状態であったか?」をアンケートしています。またメンタルとレーニング応用スポーツ心理学研究会のメンバーの方々も自分のチームに同じようなアンケートを実施しました。そのアンケート結果を、いくつかここで紹介してみましょう。

●「打ったシュートがはずれる気がしない。」
●「時間がゆっくりになっていたような気がする。」
●「水と一体化している感じがしました。」(水泳)
●「的が大きく感じられました。(アーチェリー)
●「コースが短く感じられました。」
●「試合が近づくにつれて気持がすごく楽で・・・」
●「試合中のことは一切憶えていません。」
●「時間がすごく短く感じられました。」
●「明日は自分が一番にゴールするなと感じていました。」
●「すごく大きく、あせらずプレーしていたと思います。」
●「練習の時の気分で普通に打っていました。ただ妙に楽しくて・・・」
●「試合が終わってみたら日本新だったというぐらいの感覚でした。」
●「ピッチャーの球がとても遅く感じられました。」
●「あまり、というかほとんど何も考えずにどんどん点数がよくなっていきました。」
●「気分はとてもゆったりとしていて、何も考えていなかった気がします。」
●「試合のことだけを考えて、まわりがゆっくり動いている感じでした。」
●「楽しい」「リラックス」「気楽な気持」「強気」「プラス思考」「開き直り」
 「自信」「結果を考えない」「無意識だった。」「いけるという感じ」
●「まわりがよく見えた。」
●「ボールが止まって見えた」
●「雑音が急に聞こえなくなった」
●「時間が短くなった」
●「全然疲れなかった」
●「体が軽かった」
●「体が自然に動いた。」
●「朝食がおいしかった」
●「目覚めがよかった。」

 もっとたくさんのアンケート結果がありますが、調べれば調べるほど内容は、共通するものばかりです。よく人が事故などにあって死に直面したときに、すべての動きがスローモーションのように止まって見えたという報告があります。これは、死の危険を感じて防衛本能が働いて五感が高まった結果なのです。一流選手ほど、すぐにこれに近い状態が作れるのです。こうした最大限に力を発揮できる心理状態をメンタルトレーニングの専門用語ではゾーンとかフロートと呼んでいます。

 それでは、もう少しこの理想的心理状態について考えていきましょう。最も集中力が高まった状態とは、上の第6章と第7章で紹介したリラックス緊張/興奮(サイキングアップした状態)のバランスがうまく取れた状態を指すのです。下の図1を見てください。この図のレベル@の状態はリラックッスしすぎていて逆にだらけた感じです。しかし逆にBでは過度の興奮や緊張からまわりが見えなかったり力んだりして自分をコントロールすることが出来ません。そしてその@とBの中間のAの状態が一番バランスが取れた理想的な心理状態なのです。つまり適度の興奮状態にあり、一心不乱で競技以外のことが全く気にならないような集中した状態です。こうしたリラックスと興奮のバランスを表した曲線を逆U字曲線と呼びます。

図1
 

しかし、当然このリラックスと興奮のバランスにも個人差があります。過度に興奮したほうがよい結果を出せる選手もいれば(逆U字曲線が右より)、逆に十二分にリラックスしなければ能力を発揮できない選手もいます(逆U字曲線は左より)。(下の図2)

図2


 またこの理想的な緊張レベルはスポーツ種目によっても異なります。アーチェリーや弓道のように静的に緊張感を高める種目でサイキングアップしすぎては当然良い結果は望めません。逆にボクシングや重量挙げ、ラグビーのような激しい動きを伴うスポーツではリラックスしすぎては気分も盛り上がらず力を発揮できないでしょう。これを表しているのが下の図3です。

図3

 大事なことは、種目や個人によって自分の理想的な緊張レベルを把握しておき、いつ何時にでもその状態を作り出せるように訓練しておくことなのです。そのためには日頃から週に数回はしっかりとリラクゼーションをしておく必要がある。自分の1番深いリラクゼーションの状態を経験しておかなければ、試合等でどこまでリラックスしたらよいか、リラックスの最適なレベルを判断できません。筋弛緩法で最初に最大に筋に緊張を感じてから脱力するのも同じ目的なのです。(近畿大学の高妻容一先生はストレッチや筋弛緩法の時に「リッラックスした筋肉と緊張した筋肉の状態の違いを感じてください。」と言う。)
 試合当日も音楽を聴いたりしてリラックスしたり、試合のイメージをして緊張感を高めたりして、リラックスと緊張の波を交互に上げ下げしながら自分にとっての最適な緊張レベルを探っていくのです。

大塚高校駅伝チームでは、試合場に到着すると下のようなメンタルチェック用紙を使って、その日の自分の心理的緊張レベルをチェックします。(高妻容一先生が作成したものを一部改編して使用)。そしてリラックスしすぎていたり、緊張しすぎていると感じたらウオーミングアップが完了するまでの時間の中で音楽テープを聴いたり、筋弛緩法や呼吸法などを使って自分の理想的な心理状態に近づけていくのです。                            

試合会場到着後のメンタルチェック表 (大塚高校駅伝チーム)
競技場到着後のちょっとした空き時間にイメージトレーニング、セルフトークの要領で自分の状態に当てはまるものをチェックして準備完了か確認してみよう。そして試合で最高能力を発揮するために、これからウオーミングアップの中で何を高めていけば良いか思い出してみよう。
                            1.最悪 2.悪い 3.普通 4.良い 5.最高
1.昨夜はよく眠れましたか?                    1. 2. 3. 4. 5
2.朝は気持ちよく起きられましたか?               1. 2. 3. 4. 5
3.朝の洗顔時、良いスマイルができましたか?        1. 2. 3. 4. 5
4.朝御飯は気持ちよく食べられましたか?           1. 2. 3. 4. 5
5.試合会場には余裕を持って来られましたか?       1. 2. 3. 4. 5
6.現在のリラクセーションの程度は?           1. 2. 3. 4. 5
7.現在のサイキングアップの程度は?          1. 2. 3. 4. 5
8.この試合への集中力の程度は?             1. 2. 3. 4. 5
9.この試合で目標達成する自信は?           1. 2. 3. 4. 5
10.この試合のプラスイメージは?            1. 2. 3. 4. 5
11.プラス思考の程度は?                1. 2. 3. 4. 5
12.プラスのセルフトークは?              1. 2. 3. 4. 5
13.理想的な心理状態の程度は?            1. 2. 3. 4. 5
14.コーチとのコミュニケーションは?            1. 2. 3. 4. 5
15.私は天才だよな?                 1. 2. 3. 4. 5
16.試合がやりたくて待ちきれない?           1. 2. 3. 4. 5
17.試合を楽しめそうかい?                  1. 2. 3. 4. 5
もし、上の自己チェックでリラックスが足りないと感じたらリラクセーションテープを聴いてストレッチをしたり、筋弛緩法や呼吸法などを使ってリラックスを心掛けてみよう。また興奮が足りないと感じたら、サイキングアップテープを使ったりレースのイメージトレーニングをして緊張感を高めてみよう。思ったほど自信が湧いてこなければ鏡に向かってスマイルしながらプラスのセルフトークをしっかり行ってみよう。
★プラス思考のキーワード(セルフトーク)
1.調子は?( 最高!!                          )
2.この中で一番強いのは?(  あたししかいないでしょう (^_^)    )
3. その他(  結果を恐れず思いっきり試合を楽しむぞ!!          )
★コーチやチームメイトとのプラス思考の合図(サイン)
( 出来る!! 大丈夫!! やれる!!   )(  スマイル!! (^_^)V   )


試合後のチェック用紙 結果/タイム・成績(             )
1.この試合のあなたの目標は何でしたか?目標はどの程度達成できましたか?
2.この結果に何が満足で何が不満足ですか?
3.この結果にコーチはどんな態度、言葉、気持ちを示しましたか?
4.心理的な調整具合はどうでしたか? 何が十分で何が不十分でしたか?
5.リラックスと興奮のバランスはどうでしたか? リラックス:興奮= 3 : 7

 6.今回、足りなかったのはリラックスですか?
 それとも興奮ですか?

 7.リラックスと興奮の割合がどれくらいの時が
 あなたのの理想的な心理状態だと思いますか?
  (  ):(  )

 8.リラクセーション、サイキングアップの成果は
 どうでしたか?






 9. イメージトレーニングの成果はどうでしたか?
10. 平常心でどれくらい自分をコントロールできましたか?
11. 試合前にどれくらい自信がありましたか?
12. 試合直前にどのような不安がありましたか?
13. 試合前のコーチとのコミュニケーションはうまくいきましたか?
14. コーチのどんなアドバイスが役に立ちましたか?
15. 観客やOB、コーチなどが気になったり邪魔になったりする事はありませんでしたか?
16. レース直前何を考えていましたか?
17. スタート直後の自分の走りはどうでしたか?    
18. 試合中、強気か弱気になった場面がありましたか? その結果は?
19. 試合中一番苦しいところで何を考えていましたか?
20. 試合中何か予測していないことが起こりましたか?
21. もし起こったなら、それにどう対処しましたか?
22. 試合を楽しめましたか?
23. 次の試合に向けてのプラス思考は?




9.集中力、気持の切り変え

 ここでは実際に大塚高校駅伝チームが高校駅伝に参加するにあたって活用したメンタルプランを紹介して集中力の高め方について考えていきましょう。このプランは、「大リーグのメンタルトレーニング」(ケン・ラビザ、トム・ハンセン共著、高妻容一、関矢寛史他訳、ベースボールマガジン社)と「実戦的にメンタルトレーニングの考え方・進め方」(新畑茂充、関矢寛史共著、黎明書房)の内容を参考にして私がプリントを作成して実際に選手に配布したものです。(なお、このプリントを作成するにあたり私は新畑茂充先生と高妻容一先生、ケン・ラビザ、トム・ハンセン氏から直接のご指導を受けています。)

大塚高校陸上競技部  駅伝のためのメンタルプラン 1997.11.5
1.何に集中するか
1)以下の各項目について、あなたが試合開始までに直接コントロールできるものに○をつけてみよう。

○当日の天候(快晴、雨、強風等) ○あなたの態度 ○ライバル校の調子、実力  ○あなたの体重 ○審判の態度、言動 ○あなたの調子 ○チームメイトの調子  ○あなたの気分、やる気 ○コーチとの人間関係(コミュニケーション) ○観衆の態度  ○チームメイトとの関係(コミュニケーション)○親との関係(コミュニーケーション)  ○あなたの発言 ○自分が何位でタスキをもらうか ○食事 ○ヘモグロビンの値  ○自分のスタート位置が何列目の何番目か ○あなたの運命 

2)上のチェックを見て何を感じましたか?
あなたは、自分自身でコントロールできないことを気にしすぎていませんか? そして自分でコントロール出来ることを本当にコントロールしようと努力していますか?
 

3)次の言葉の意味をよく考えてください。
●2流、3流選手は周りの環境(天候、チームメイト、コーチ、対戦相手、審判、観客、親等)に腹を立てたりしますが、1流選手が気にしたり腹を立てるのは自分自身についてだけです。  
●あなたは、あなたの周りで起こることをコントロールすることは出来ませんが、あなたが、どう反応するかを選択することは出来ます。  
●あなたは自分のパフォーマンス(競技結果)をコントロールする前に自分自身をコントロールしなければなりません。
●あなたがコントロールできるものは、あなた自身です。
●あなたがコントロールの範囲外のことを心配するのに費やすエネルギーは、パフォーマンス(競技)に集中するために必要なエネルギーを減少させるのです。
★試合が近づけば雑念を捨て、自分の今すべき事にのみ神経を使って集中してください。

4)未来のことではなく現在に集中する。
 アトランタオリンピックで高飛び込みの選手が最後の飛び込みを前にしてあと1歩でメダルという位置につけていました。その選手が飛び込み台の上に立ち飛び込み動作に入ろうとした時、演技をし終わった選手の総合得点が電光掲示板に映し出されました。その得点結果が目に入った瞬間、ここで普通に演技できたら私はメダルが取れるということがわかり表彰台のシーンがちらつきました。その瞬間に緊張が走って体が固くなるのがわかりましたが、そのまま飛び込み動作にはいってしまいミスが出てメダルを逃したです。 つまり演技をする前から表彰台という未来のこと(結果)を考えて、目の前にある次のプレイに集中できなかったのです。 前任校で駅伝当日にライバル校の1区の走者が大ブレーキを起こしたことがありました。3区の選手の所に行って「○○校が大ブレーキで1分半も差がついたぞ、今日は勝てるぞ」と告げてしまいました。その選手は「勝てる」と結果を意識しすぎてしまい自分らしい走りが出来ずに終わり、結局6区で逆転されて負けてしまいました。指導者もレースの途中で勝ちという結果を意識しすぎて今すべきこと、つまり一人一人の選手に冷静に自分の走りをさせることを忘れてしまったのです。 
 駅伝の全区間の中では、独走する区間もあれば、出遅れる区間もあります。しかし勝負は競技場に帰ってくるまでわからないものです。途中で勝ったと思わないこと。負けたと思わないこと。 今の自分の区間に集中することです。

5)過去のことではなく現在に集中する。  
 野球のバッターが絶好球を見送って悔しがってバットで地面を叩くシーンがよくあります。絶好球を見送ったというのはもうすでに「過去」のことです。済んでしまったことをいつまでも心の中で引きずっていては次のバッティングに集中できません。 駅伝でも入りの1kのラップが遅すぎたり速すぎることは、よくあることです。しかし失敗したと焦ってしまうことがさらに次のミスを誘います。時計でラップを確認し次の1kで修正していけば十分対応していけるのです。ペースが遅すぎたという過去を引きずらないで次の走りに集中していくことです。 ★過去や未来は今自分でコントロールすることはできないのです。自分でコントロールできない ことについていくら考えても、よい結果は生まれません。自分でコントロールできるのはそのときに目の前にある次のプレイなのです。意識の焦点を常に過去や未来といったコントロールできないものではなく、コントロールできる現在に合わせるべきなのです。例えばアップの最中は試合の結果をあれこれ考えるより、今しているストレッチだけに集中しましょう。そして次にジョッグ、流しと一つ一つ目の前にあることに焦点を移していけばよいのです。

2.集中力の高め方
1)attitude control(態度のコントロール)
 心をコントロールするより態度をコントロールすることのほうが簡単に出来るものです。 レース前は誰もが不安で弱気になるものです。内心不安がいっぱいでも、試合会場では、出来る限り堂々と胸を張り、偉そうな態度を取ることです。ライバルやライバル校の監督に会ったら思いっきりさわやかな笑顔を見せつけて大きな声であいさつしておくことです。スレ違いざまに下を向くなどというのは弱気の証拠です。偉そうな堂々とした態度をとるうちに心もどんどん強気になって集中力が高まるものです。コールの時も出来るだけ胸を張り大きな声で返事をしましょう。

2)音楽テープや腹式呼吸、筋弛緩法を使ってリラクセーション。

3)テープ(「アイオブザタイガー」)を聞いてサイキングアップ。

4)4通りの注意の向け方で集中力を高める
●「広い外的な注意」---自分を取り巻く環境すべてに目を向けること 
 →競技場に着いたら気温、風の向き、太陽の位置、路面の状態、観客の様子などに注意を向けて冷静に集中力を高めていく。
  →スタート数分前にもう一度、沿道の景色や、観客の顔、青空などに遠くにあるものに目を向けリラックスをはかる。
  →1区の選手などは、競技場内を走っている間やレースの前半はスタンドの観客や周りの景色や応援する仲間などにときおり目を向けてリラックスをはかる。
●「広い内的な注意」---自分の記憶を基に試合の流れや作戦に注意を向けること
  →レース中に苦しかった過去の練習を思い出したり、恋人や両親のことを思い浮かべたり、ゴールする瞬間のことを思って苦しさをまぎらしたりする。
●「狭い内的な注意」---自分のコンデションに目を向けたりイメージを描くこと。
  →アップ前に目をつぶって音楽でも聞きながら今日のレースをイメージをしてみる。
  →アップの中で心拍数を計ったり、筋肉の緊張状態を確かめたり、レース中に自分のフォームや呼吸の速さなどをチェックしたりする。
●「狭い外的な注意」---目の前にある一つの対象物にのみ全ての注意を向けること
 →レース直前自分が決めておいた競技場のセンターポールをじっと見つめて集中力を高める。
 →手のひらに書いた「平常心、強気」の文字をレース直前にじーと見つめてから走り出す。
 →レース中、先行するランナーのかかとの1点だけをにらみながら追走する。
★スポーツの場面では上記のような注意の向け方がありますが、いつ何に注意を向けるかが最も重要なポイントとなります。この4つのタイプの注意をうまく切り替える能力が集中力なのです。 この場面ではこれをして集中力を高めるという自分流の行動手順(ルーティーン)をあらかじめ計画しておきましょう。

3.キーワードによる集中力の回復プラン
不安を抱いたり弱気になっている自分やチームメートに気づいたときには、キーワードを使ったセルフトークやチームで決めたサインを使って集中力を回復しよう。
●「調子はどうや?」→「絶好調!!」
●マイナス思考が出てきたら頭の中で「ブー」を鳴らす。
●「あせらず、あわてず、あきらめず」
●親指を天に向けるサイン=「やれる、大丈夫、できる!!」
●「スマイル」 (カメラを向けて)
●「試合を楽しめよ」  
●レース前、木に手を突いて深呼吸を3回。「自分の中の不安や弱気や疲労は全てここ(木)に捨てていくぞ。」

4.イメージの作り方 、MENTAL PREPARATION(心の準備))
1)イメージトレーニングでは100パーセントのパフォーマンスばかりを想像しがちですが、試合では色々なアクシデントも起こりがちです。パーフェクトイメージばかりしていると些細なアクシデントにも動揺して自分を見失ってしまいます。
 イメージトレーニングでは、パーフェクトイメージだけでなく何かアクシデント生じた場合も想像しておいて、そのアクシデントを乗り越えて最後には成功する自分をイメージしておきましょう。

2)試合直前や試合中に起こりうることを全て予想して書き出し、その対処方も計画しておこう。

予想される試合の場面
状況
ネガティブシンキング
マイナスのセルフトーク
ポジティブシンキング
プラスのセルフトーク
対処方法
準備すべきこと
例)強風 私は風に弱い。
もう終わりだ。
条件は皆同じ。
強気で行こう。
精神力の見せ所。
跳ぶ走りは風に流される。
いつも通りのピッチ走法
を心掛けよう。

気温が高い
予想していなかった選手が
自分と同じ区間に登録された。
えー、そんなはずじゃ
なかったのに。
誰が来ても私の力が変わる
ものではない。私は私。
その選手の能力、特徴は一応コーチ
に聞いて確認しておこう。でも気にし
すぎない。
(1区の選手)スタート直後に
集団にポケットされて前に出られない。
前の走者が予想より早い順位で来た。
自分の所で抜かれたら
どうしよう。かっこわるい。
仲間はみんな絶好調。
私も絶対調子がいいはず!!
前半は落ち着いて走ろう。
でも消極的にならぬよう。
前の選手が予想より遅い順位で来た。
ライバル校が見えないほど離れている。
ああもうダメだ。
優勝は無理だ。
私が抜いたら一躍ヒーロー。
目立つチャンス!!!
初めにオーバーペースに
ならぬようにラップを良く
確認しながら前を追いかけよう。
1Kをすぎたらどんどん行くぞ!!
ライバル校とほとんど同時にたすきを
受け取った。
自分のペースで走れる
かな?離れたらどうしよう。
競り合ったらそれだけ
記録が上がる。区間新だ!
相手の今日の調子、力をそれとなく
観察しながら前半は余裕を持って
行こう。スパートのタイミングを計ろう。

気持の切り換え(Refocusing---途切れた集中力を再び回復する)

 上でも述べたように、レースの中では予期せぬアクシデントが起こることがあります。多くの選手はそのアクシデントによって緊張感を失ったり、集中力を失うことがあります。日頃の練習から様々な場面で気持の切り換えが出来るように訓練しておけば、どんなアクシデントが起こっても対応できるものです。
 ここでは、1500Mのレース中に転倒した選手(私の前任校の選手。メンタルトレーニングを2年間指導)の感想文を紹介しましょう。彼は大阪インターハイ地区予選で1500Mのスタート後100Mで転倒してしまったのですが、あわてて前を追わずに先頭との差を1周ごとに徐々に詰めてラスト100Mで逆転して優勝してしまいました。普通は大事なレース中に転倒すると、気が動転してあわてて先頭を追ってオーバーペースになる例が多いものです。しかし本人は、日頃からメンタルトレーニングを実施していたおかげで、瞬時に気持ちを切り変えて落ち着いて状況を判断する事が出来たと自己分析しています。

●(大阪インターハイ地区予選1500M  W.UPからレース終了までを振り返って)  3年生 O選手
今日は1500Mを走るので、朝からずっと興奮していた。昨日のメンタルトレーニ ングでもイメージしていると、イメージと同時に体を動かしたりするほど、やる気と気 合いが十分だった。アップの前のメンタルトレーニングのイメージトレーニングでも、 いい所ばかりイメージして、悪い所なんて一つもイメージしなかった。体は少しだるか った。レース前には先生に言われた通り、サイキングアップとリラクセーションを繰り返した。気持ちは朝から高まっていたのでレース前だからといって高まらなかった。 今日は4分ひとけたで走れる気がしていた。けど、イメージトレーニ ングスタート地点 は、いつも1列目の中央らへんだったので、今日のスタート地点と重ならなかった。 外に出らなあかんのにインでガンガンいった。外に出ていこうと思ったらコケてしまった。最悪だと思ったけど、一瞬できもちを切り変え走り続けた。メンタルトレーニング をしていたおかげで気持ちがすぐ切り変えられたと思う。メンタルトレーニングの成果 は十分なものだとわかった。ラストスパートもスピードが出たし良かった。明日は5000Mを走るので何通りものパターンを考えて、イメージトレーニングしたい。 (全て原文のまま)

※旭化成の谷口浩美選手がオリンピックのマラソン本番で転倒したのに、あきらめずに気持を切り変えて8位に入賞したのは有名な話です。

※レース前の心の準備や集中力の回復プランについては、テリー・オーリック博士の講演会を紹介したページ(メンタルトレーニング研究会のページ)で詳しく紹介していますので、そちらを参照してください。。



10.イメージトレーニング(Vizualization )

「あなたの描いているイメージが、将来のあなたの姿なのです。」

If you really want it,  もし、あなたが本当にそれを望むなら
you will be able to picture it.  あなたは、それをイメージすることが出来るでしょう
If you can picture it,  もし、あなたがそれをイメージすることが出来たら
you will be able to believe it.   あなたは、それを信じることが出来るでしょう
If you can believe it,  もし、あなたがそれを信じることが出来たら
you can achieve it.  あなたは、それを達成することが出来るでしょう

TEN-STEP SYSTEM FOR WRITING your PERSONAL VISUALIZATION SCENARIO
あなた個人のイメージトレーニングのシナリオを作るための10ステップ

Step 1: See, hear, and feel yourself while training and racing.
ステップ1:トレーニングやレースの最中に観察してください、耳をすましてください、そして自分を感じてください
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Step 2: Write down or make a tape recording of all the details you see, hear, or feel.
ステップ2:あなたが見たり、聞いたり、感じたことの全てを詳しく書き留めたり、テープレコーダーに録音したりしてください。
--------------------------------------------------------------------------------
Step 3: See, hear,and feel yourself arriving at the race site. Mentally go through your pre-race warm-up. Pay particularattention to your routine the last fifteen minutes before you race.
ステップ3:レース場に着いたら、観察してください、耳をすましてください、自分を感じてください。試合前のメンタル面のウォーミングアップをしてください。レース前の最後の15分間は自分のルーティーンに特別の注意を払ってください。
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Step 4: In writing, describe with clear detail the race you are about to run and how you will experience it. Be sure to include anticipated weather conditions, the smells near the race site, the sounds the crowd will make, and anything elseyou can see, hear, or feel.
ステップ4:記述するときは、今から走ろうとするレースで、あなたがどんなことを体験するのか、出来るだけ詳細に描写してください。予想される天候の様子、競技場のまわりの匂い、観客の喧騒など、あなたが目にするもの、耳にするもの、感じることを、どんなことでも書き留めてください。
--------------------------------------------------------------------------------
Step 5: Along with the details you have described, picture yourself being completely relaxed, confident, and in completecontrol of both your body and state of mind. Recall your specific "trigger" words those words and phrases that help you feel confident and "in the groove."
ステップ5:あなたが記述した詳細に従って、自分自身をイメージしてください。あなたは完全にリラックスして自信に満ちあふれており体と心を完全にコントロールしているのです。そのとき特別なキーワード、つまりあなたが自信満ちていて絶好調であることを感じられるような語句を思い起こしてください。
--------------------------------------------------------------------------------
Step 6: Completely run the race through in your mind, paying careful attention to what you see, feel, and hear at each important split. Feel and see yourself moving strongly and smoothly, just cruising along while remaining relaxed and in control.
ステップ6:心の中でレースを完全に走りきってみてください。レースの重要な各地点であなたが目にするもの、感じるもの、耳にするものに注意を払ってください。力強く、なめらかに進んでいく自分を感じてください、見てください。あなたはリラックスして自分をコントロールしながら適切なスピードで走っているのです。
--------------------------------------------------------------------------------
Step 7: When you have pictured all of this, write down the comments that help you to relax, and remind yourself how confident, tough, smooth, and fast you are.
ステップ7:こうしたことを全てイメージできたら、あなたをリラックスさせてくれて、自分がいかに自信に満ちあふれ、たくましく、なめらかで、速いかを思い出させてくれるコメントを書き込むのです。
--------------------------------------------------------------------------------
Step 8: Put all of the above information into a script and after editing it, slowly read it into a tape recorder.
ステップ8:上で書き留めた全ての情報を原稿にしてください、編集し終わったら原稿をゆっくり読み上げてテープレコーダーに録音しなさい。
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Step 9: Listen to your tape and change your script and tape until satisfied.
ステップ9:テープを聴き、満足いくまで原稿とテープを作り直してください。
--------------------------------------------------------------------------------
Step 10: Listen to your finished tape as often as you want to before race day (at least once a day is recommended). The key is to listen in a quiet place where you will not be disturbed.11
ステップ10:レース前には、完成したテープを出来るだけたくさん聞いてください。(少なくとも1日1回は聞くようにしてください。) 大事なことは、あなたが心を乱されないような静かな部屋でテープを聴くことです。

VIZUALIZATION(イメージトレーニング)の実際例 
陸上競技 5000M

この原稿をバックミュージック付きでテープに吹き込んでチームで使っています。
原稿は、K.Porter J.Foster共著、阿江美恵子他訳、「ポーター&フォスターのメンタルトレーニング」、(不味堂出版、1988)を参考にして作りました。

あなたは、リラックスした気分で競技場へ到着したところだ。電車から降りたときから、あなたの心はレースに向けられている。競技場のいつもの場所に着くと、身の回りに注意を向けてみよう。どんな天気か、日が照っているか、曇っているか、雨なのか、あなたの目に浮かぶ通りにしよう。他の選手に目を向けると共に、自分が冷静で自信に満ち、リラックスしているのを感じとろう。自分が十分冷静で、準備は万全であるのがわかっている。 トレーニングを積んできて準備は整っているのだ。
あなたは、レースに向けてウオーミングアップを開始している。体を暖めるジョギング、ストレッチ、P.N.F、スクワット、軽い補強運動。動き作り。いつものウオーミングアップで行うことをすべて思い浮かべてみよう。体がほぐれたら、再びジョギングを始める。体が暖まるにつれて、軽快なリズムに乗って自然にペースが上がる。体の奥からエネルギーが湧いてくるのを感じる。今日は調子が良い。続いて流しを行う。風を切るような快調さでスピードがぐんぐん上がる。心臓の鼓動が高まるのを感じ、いつも通りのその感覚が心地良い。

汗を拭き、シャツを着替えてコール場所に向かう。他のランナー達に注意を向ける。誰がライバルなのかは知っているし、彼らの強さも弱点も分かっている。同時に自分が大変リラックスしていて、しかもこのレースに対して興奮と期待感を抱いているのを感じる。 自分の名前が呼ばれ、ゼッケンを見せる。少し緊張しているのを感じるが、長年親しんだその緊張感は、レース前に起こる自然な状態だ。自分はこの緊張感を楽しんでいる。自分がスタート地点の何列目に並ぶかを確認し、スタートの作戦を思い浮かべる。しかし、一度頭の中でイメージしたら、それは次第に頭から消していく。 コールが終わりスタート地点に向かう。お気に入りのチームのユニフォームに着替え、再びジョギングをしながら、気分を高めていく。サイキングアップだ。最後に快調走を数本行い、ピリッとした刺激を与える。

いよいよ自分の組が呼ばれ、スタート地点に並ぶ。体内にアドレナリンの流れを感じリラックスしている。ふーと大きく深呼吸して空を見上げる。筋肉もスタートを待っている。このレースを長い間待ち望んできたのだ。体中が燃えているが、頭は冷静である。 「用意」の声が掛かりピストルが鳴って走り出す。最初の数歩が勝負だ。ずっと鳥かごに閉じこめられていた後、今解き放たれたように自由に体が動く。誰もがレースに突入し好位置につくために押し合っている。最初のコーナーを過ぎても選手達の位置は入れ替わりながら移動していく。自分のペースを守っていけ。リラックスして流れるような動きを保ちながら、レースの初めはこの辺り、と考えていた位置につけている。誰かがあなたの肩に突き当たる。自分のフォームとバランスを保とう。集団の中に囲まれても、あせらず直線に入ってから外のコースへ出て行こう。周りの選手達を目の隅の方に入れている。彼らがどこにいるかを、目で追い続ける。歩調はスムーズだ。心は集中しており、バランスも良く、しかも快適だ。このレースはとても楽しい。競技の感触はとてもすてきだし、次のカーブにさしかかるときには、体中に力強さと活力がみなぎるのが感じられる。 1周目は完全に自分をコントロールでき、楽に流れるような感じであった。

チームメートが叫ぶラップタイムを冷静に聞いて調整をはかる。力まずリラックスしていて良いフォームで走っている。快適だし、楽な気持ちだ。1KM地点にさしかかる。タイムをチェックする。予定通りだ。ペースは良好。フォームと呼吸に集中する。規則的でリズミカルだ。肩に余分な力は入っていないし、腕は楽に振れている。リズムに乗ったまま、2Kを通過。先頭集団に誰がいるのかを確認する余裕がある。 フォーム、身体、レース展開に集中し、理想的なリズムを保つ。太陽の光や風、時には小雨を肌で感じる。皮膚に受ける天候の自然な感覚だ。好調に動く身体、維持されたフォーム、力強い走りを感じる。心の中で、自己肯定の言葉をいくつか言う。「いい調子だ。十分満足行く状態で、余裕しゃくしゃくと走っている。」  

3K地点をあっと言う間に通過する。さあ、ここからが本当のレースの始まりだ。読み上げられるタイムを聞き、うまく調整をはかる。ペースが落ちていたらリズムを上げ始める。身体の準備はできている。たとえ苦しくても、その苦しみを昔の友人のように喜んで受け入れる。それがレースのすべてなのだ。もし、マイナスの思考が浮かんだら、それは単に認めただけで、静かに消し去り、フォームとプラスの思考に意識を戻す。ペースをあげる。少し疲労を感じても、それは認めて呼吸に集中する。頑張ってゴールに到達するときはいつもここを当たり前のように乗り越えるのだ。あなたは、とても強いし、とても良いコンディションにある。十分トレーニングも積んできた。あなたのために、身体はやり遂げてくれる。息を吸うとエネルギーが体内に取り込まれていくのを感じる。息を吐くと疲労が体内から去っていく。新鮮な酸素が体内に行き渡り、新しいエネルギーと力が与えられる。 後方から追い上げてくるランナーがいる。彼らが追い越しにかかったら、リズムを上げて彼らと肩を並べる。追い抜かれてはいけない。彼らも今が一番苦しいのだ。心理的な勝負。苦しそうに数人が先頭集団から遅れていく。 一番苦しいこの1KMをあなたは乗り越えた! 

ラスト1Kになると、急に気持ちが楽になり、新たな闘志と力が湧いてくる。身体が興奮するのを感じる。腕を振って、どんどんペースを上げる。集団を振り切り、先行するランナーがいたらぐいぐい差を詰める。 ついにラスト1周の鐘。今こそ加速だ。キックを強める。バックストレートでスピードに乗りラスト200M。カーブを抜け出し、勝負を賭ける。最後の直線を飛ぶように駆け抜けよう。今や、あなたはスプリンターだ。すばらしいフォームだ。そのフォームを維持してライバルを一気に突き放す。ラスト50M、最後の力を身体の奥から探し出し取り出そう。ゴールは目の前だ。強く力あふれるストライドでゴールラインを駆け抜ける。  

あなたは自分に勝ったのだ。 幸福感と得意な気持ちが身体の中を通り過ぎる。希望を成し遂げたのだ。いかに自分が強いかを悟り、目標達成の喜びに浸る。満足感と成就感。あなたは、肉体的にも心理的にも強く、敵より優れている。今まで行ってきた身体的、心理的トレーニングが今、報われたのだ。 両手を腰に当て、息を切らし、大きく呼吸しながら歩く。仲間が駆け寄ってきて、握手を求めあなたの背中をたたく。呼吸を整えるために、ゆっくりジョギングする。レース後の爽快感、開放感、喜びを噛みしめる。最善を尽くし切って、満足感にあふれた、人生における最良の瞬間を味わいながら、自分に言う。 「私はやった。自分を支えてくれた強靱な肉体と強い精神力に感謝しよう。」  「私は、いつでも今日と同じように力を出し切り試合を楽しむことができる。」  さあ、このイメージと感情を頭の中からゆっくりと消していこう。頭の中を真っ白にして、ゆっくりと現実の空間に戻り始めよう。床や椅子の感覚。リラックス。そして自分の両腕、両足の重さを感じよう。つま先をそっと動かし、次に指を動かそう。呼吸を意識しよう。鼻から深く息を吸って、止めて、そして吐きだそう。リラックスして、新しい穏やかな活力に満たされている。大きく伸びをして、頭、肩、両腕、お腹をセルフマッサージして、準備ができたら、さわやかに目を開けよう。


11.メンタルリハーサル

 「大塚高校陸上部、駅伝のためのメンタルプラン」の所にも載せていますが、大会当日に起こりそうな事を全て想定して、前もってイメージをしておきます。初めて行く大会会場の場合は前もってマネージャーや監督が下見をしてビデオに収めてくることが大切です。高妻容一先生は、近畿大学のバスケットボール部の指導をされていたとき、目指す大会のために、遠方の試合会場まで実際に下見をしに行き、近畿大学の最寄り駅から電車に乗り込むところから、大会会場の最寄り駅を降り会場に到着するところまでも全てビデオに収め、大会会場や宿舎の様子なども克明にビデオ撮ってメンタルリハーサルビデオを完成されています。それを選手に何度も見せることにより、選手は初めて経験する試合会場でも、もう何度も経験済みのような感覚で落ち着いてプレイすることが出来るのです。
 駅伝やマラソンの場合は、コースを何度も試走することがリハーサルになります。もちろん体のリハーサルなのですが、それとイメージトレーニングを組み合わせることによって何倍もの効果を発揮するメンタルリハーサルになるのです。
 積水化学陸上部の小出監督はマラソン前に何回も試走させることで有名ですが。シドニーオリンピックの時には、大会前にちょうど30km付近に宿を借りて、そこで毎朝高橋尚子選手にラストスパートの練習をさせていたそうです。
 メンタルリハーサルでは、色々な場面を想定していき、それぞれの場面ごとにその対処法をイメージしておきます。
 ●色々な天候(強風、雨、熱暑、・・・・・)
 ●様々なレース展開(ハイペース、誰か1人が飛び出したとき、スローペース、独走でたすきをもらう、すごく出遅れてたすきをもらう、
   ライバル校と同時にたすきリレー、僅差で追いかける展開、追いつかれたとき、追いついたとき・・・・・・。投てき選手が最後の一投を   残してリードされている等)
 ●時には好ましくないアクシデントが起こったときのことも想定しておきます。(ただしこれはメンタルトレーニングの上級者で無いときは   マイナスイメージを植え付けるので避ける方が無難です)大事なことは、何かアクシデントが起こっても、それに冷静に対処して最後    には成功するイメージで締めくくることです。
 ☆スタート直後に転倒、吸水地点で転倒。しかし冷静に立ち上がって徐々にリズムをあげ先頭集団に追いつく等・・・・

 大事なことは選手が試合会場でどんな場面に出くわしても、これは頭の中でリハーサルして最後に成功したあのシーン通りだと思えるようにしておくことなのです。人間は予想もしなかったことに出くわすと混乱して自分をコントロールすること事が出来なくなりますが、一度でも経験したことには落ち着いて対処できるものなのです。メンタルリハーサルでは実際には体験していないことでもイメージの中で何度も体験したことにしてしまえるのです。

12.チームメートやコーチとのコミュニケーション




13.メンタルトレーニングの研究会、講習会のご案内

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