1998.5.30
ケン・ラビザ、トム・ヘンソン氏の講演会

国際ワークショップ/第2回メンタルトレーニング・サミット
「大リーグのメンタルトレーニング」の著者ケン・ラビザ博士、トム・ヘンソン博士の講演会
第45回メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会   
1998.5.30 於、近畿大学  報告者:N.TAKEDA  

(1) そのスポーツを始めた原点

●あなた、なぜそのスポーツをやっているのですか? 私は15年間野球のコーチをやってきました。自分で今でもベースボールやラグビーなどのプレイを続けています。ラグビーをするときは、タックルやスクラムを組んでいる時に体の底からエネルギーが沸き上がってくるその「フィーリング」が好きです。あなた方はどうですか?

「泳いでいる時の水に浮いている感じが好き」
「スキーで滑っている時のシューという感じが好き」
「走っているときに額に輝く汗の感じが好き」・・・・

  そうです。それがあなたがスポーツをする目的ではないのですか? 1992年に水泳の背泳ぎで過去4年間負け知らずの選手がバルセロナオリンピックに出場しました。しかし彼は「勝つこと」「金メダルを取ること」にばかり集中して、なぜ自分は泳ぐのか、そのフィーリングを忘れて負けてしまいました。その後、彼は自分の原点に戻って楽なスピードで楽しく泳ぐことから再起を図り4年後のアトランタオリンピックで見事優勝しました。


(2)夢の実現の前には、原点に立ち戻る。

このように選手がスポーツをするときに野球が好きだ、野球のことが好きでたまらないと言うような原点があるはずです。しかしそのスポーツを続けていく中で「試合に勝つこと」「プロ選手になりたい」「甲子園に行きたい」などの「結果」としての「夢」や「目標」が出てきて、自分がその夢や目標を達成するために準備をする。この準備が毎日の練習であり、それに対する勉強や研究でもあります。しかしその途中で何かの壁や障害(邪魔するもの)にぶち当たります。それは怪我・受験・人間関係・挫折・スランプなどであるかもしれません。その時こそ、その壁や障害を乗り越えることが必要です。そのためには、自分の夢や目的をもう一度見つめ直したり、思い出すことが重要です。それが先ほど質問した「なぜそのスポーツをするのか?」「そのスポーツのどこが好きなのか?」「プレイ中のどんなフィーリングが好きなのか?」などです。しかし、多くの選手は、これを見つめ直したり、思い出さないで、結果ばかりを考え、よりがんばり始めたり、もっと練習をするという行動をとります。また多くのコーチは「もっとがんばれ」「もっと練習しろ」「練習が足りないからダメなんだ」「根性を出せ、やる気を出せ」などという考えで、技術が足りないから体力をつけろという指導を始めます。その結果、選手は練習が義務になり、やらされている気分になり、やらなければならないというプレッシャーやストレスがかかります。そして野球が楽しくない、何で野球をやっているんだろうという泥沼に入り込んでいきます。 「結果」にばかり目がいっているときこそ、なぜそのスポーツが好きなのかという「原点」に戻ってみてください。

GOAL−DREAM   
        

 目標を達成する前の最後の10パーセント
 大きな夢の実現の前に最後に必要なこと、それは
 →ASOBI(遊び心)--なぜそのスポーツが好きなのか?

   ↑
   ↑

   ↑ 

 Preparation
 (準備)

 90パーセントの
 DORYOKU 努力、努力!!



(3)大きな大会ほど必要な「遊び心」。 

    夢( Dream )
       
 準備( Preparation ) ● Physical( 肉体面 ) ● Mental( 精神面 ) 
       
 邪魔するもの( Obstacles ) ●怪我、スランプ、受験など (もう一度猛練習)×
       
 夢をもう一度見つめ直す( Revisit the dream )
       
  (スポーツをするときの原点のフィーリング を思い出す。何が好きなのか?) ○        
       
 全ての準備が出来て、目標にしてきた大きな大会に臨むとき→
 (最後の最後は、結果を意識しすぎず、「遊び心」を大切にする!!。)



2004.1.31
メンタルトレーニング応用スポーツ心理学研究会主催
ケン・ラビザ博士の特別講演会
(「大リーグのメンタルトレーニング」の著者)
同時通訳・解説 : 東海大学、高妻容一



報告者 : 大塚高等学校陸上部 駅伝チーム監督 N.Takeda

大塚高校陸上部駅伝チームも参加し、3時間半にわたる貴重な講演を聴いて勉強しました。

前回、ケン・ラビザ氏が日本に来られ研究会で講演をされたのは、1998年の5月でした。
私が、大塚高校に転勤した1年目の1997年に、メンタルトレーニング応用スポーツ心理学
研究会では刊行前の「大リーグのメンタルトレーニング」の原稿を使って勉強を続けてい
ました。高妻容一先生からご指導を受けながら、本当に素晴らしい本だと感動したことを覚え
ています。野球にとどまらず、私が指導する駅伝に非常に役立つ内容でした。
その時は、まだ全国高校駅伝出場という目標は、叶わぬ夢でしたが、あれから6年の歳月が
流れ、チームは3度も全国高校駅伝に出場することが出来ました。
チームのメンタル強化に、「大リーグのメンタルトレーニング」は、欠かせない教科書です。
今回、ケン・ラビザ氏に再会し、私とチームの夢の第1章が、実現したことを報告することが
出来ました。ケンは心から祝福してくださいました。
チームのさらなる夢の実現のために、この講演会で学んだことを活かしていきたいと思います。


Dr. Ken Ravizza
Professor Division
of Kinesiology and
Health Promotion

California State
University,Fullerton

ケン・ラビザ博士
カリフォルニア州立大学フルトン校の体
育科教授。アメリカのスポーツ心理学
コンサルタントの第一人者。20年前から
現場に入り、ホッケーや水球、馬術など
のオリンピック選手、ネブラスカ大学の
フットボールチーム、NFLニューヨーク・
ジェッツなどを指導。1985年から大リーグ
カリフォルニア・エンジェルス(現アナハイ
ム・エンジェルス)のスポーツ心理インス
トラクターとなり、大リーグにメンタルトレ
ーニングの風を引き起こした。
「Heads-up Baseball」他、著書多数


Heads-Up Baseball
: Playing the Game One Pitch at a Time
「大リーグのメンタルトレーニング」の原書
Ken Ravizza, Tom Hansont
MASTERS PRESS社
「大リーグのメンタルトレーニング」
高妻容一他監訳
ベースボールマガジン社

  • Heads-Up Baseball とは、頭を上げて(集中力を高めて、胸を張り、姿勢を正して、
    ・・・常にプラス思考で)野球しましょう、という意味です。
  • Playing the game one pitch at a time とは、1球、1球に集中してプレイする
    という意味です。

私とチームがケンラ・ビザ氏からいただいた直筆のメッセージ
上:今回頂いたもの  下:前回の講演会(1998年)で頂いたもの
  • Keep it one day at a time as you run.
    Remember why you run
    and what your passion for running is・・・・
    enjoy the journey.
    Learn to be comfortable feeling uncomfortable.
    One day at a time
    .
  • あなたが走るときには、今日一日、今日一日に集中する、という
    気持ちを持ちを続けてください。思い出してください、あなたは、
    なぜ走っているのですか?走り続ける情熱とは何ですか?・・・・
    ランニングという旅を楽しんでください。
    気分が良くないときにこそ、気分を高める方法を学んでください。
    今日という一日に集中して。
    ケン・ラビザ   2004 1.31

 ※実業団に進む卒業生にメッセージを、とお願いしたら、
  上のように書いてくださいました。
  • Keep up the great work with your athletes.
    You make a difference in their lifes. (lifes→
    原文のまま
    Enjoy the Mental Game.
    Breathe deep !
    Ken Lavizza
  • あなたのチームの選手達に、素晴らしい指導を続けてください。
    あなたは、子供達の人生に影響を与える立場にいるのですよ。
    メンタルゲームを楽しみましょう。 
    ケン・ラビザ 1998 5.30

↑前回(1998年に)ケンから頂いた私の座右の銘

  • The Time is Now
    The Place is here !
    Follow your path as run the race
    Enjoy the process.
    What is your
    mission today ?
    Breathe Deep
    Ken Ravizza
    Flush it and Focus
  • (集中する)時は今です。
    (集中する)場所はここです!
    大事なレース(全国高校駅伝)を走るのと同じ気持ちで
    目の前にある小道を
    一歩一歩進みなさい。
    その過程を楽しむのです。
    あなたが今日すべきことは何ですか?
    深呼吸して
    いやなことは水に流して
    集中しましょう

    ケン・ラビザ 1998.5.30   大塚高校駅伝チームへ
<よい子のための英語教室>
●One day at a time 「その日、一日一日に集中する」という意味、
 「大リーグのメンタルトレーニング」では
 one pitch at a time (1球1球に集中する)とか
 Hitting one pitch at a time「1球1球に集中して打つ」
 のような使い方をしてる。
 終わった過去やこれから先の未来に、後悔や不安を抱くことなく
 目の前の今日この時、この瞬間に、集中しなさいという意
●Make a differnce 「影響を与える」
●Mental Game「メンタルトレーニングを活用した練習、試合、生活、
 人生・・・」のこと。
●mission「あなたがすべきこと、任務」
●Flush it 「トイレで水で流す」 嫌なこと、不安なこと、後悔、緊張等を
 頭の中から消し去りましょう、の意




ケンラビザ博士を囲んで記念撮影する部員達

ケン・ラビザ博士講演会の報告 2004.1.31 於 大成学院大学高校
報告者 大塚高校陸上部顧問 N.TAKEDA

(1) 本研究会主催者である高妻容一の挨拶

(2)講演会に参加のチーム・個人の自己紹介

(3)講演に先立ちケンラビザ氏が登場するTV・ビデオを
  大商学園、田口耕二が紹介

(4)指導したチーム・選手
  • メジャーリーグ・エンジェルス 16年間
  • 長谷川滋利投手(現マリナーズ)
 初めて指導したのは、女子の体操選手だった。よく平均台から落ちることがあった。コーチからは自信をつけさせてくれと言われた。しかし私はその方法は好まなかった。私は、女の子達を床に寝かせてリラクセーションとイメージトレーニングをさせた。その後、平均台に昇ってもすぐに効果はなかった。それでも選手達はその手法を気に入ってくれて、継続して続けることになった。メンタルトレーニングは、すぐに効果がある魔法ではない。他のトレーニングと同じで練習を続けなければ、効果は出ない。
一番大事なことはミスしたことから学ぶこと。長谷川滋利選手も初めは打ち込まれた。そこから何を学ぶか?

(5)オリンピック選手や大リーグの選手から学ぶこと
(Lessons learned from Olympic atheletes)
  • 真剣さや情熱(まじめで熱い気持ち)
  • 目標設定
  • 質の高い練習
  • 心理的準備
  • 集中力・集中力の回復
  • 評価(自分がしたことをチェック・反省・判定)
●真剣さや情熱
 オリンピックで活躍した選手に対して調査した。性格は関係ないことがわかった。
まず真剣さや情熱が人よりあった。今日は若い選手達が多く参加しているが、競技に対して、また学校の勉強や家での生活に対して真剣さや情熱を持つべきである。何に対してもバランスよく情熱を持ち目の前にあることに夢中になることが大切である。

 私が選手に会ったら必ず聞くことがあります。「なぜあなたはそのスポーツをしているんですか?」 コーチには、「なぜコーチをしているんですか?」と聞きます。

「なぜ野球をしているんですか?」「野球が好きだからです」「なぜ、野球が好きなのですか?」「野球のどこが好きなのですか?」
・バッテイングをするのが好きだから
・ユニフォームが気に入っているから
・チームが好きだから
・自分の技術を人前で見せることが好きだから。
・初めてプレイしたときの、爽快感、楽しさ、面白さが忘れられないから・・・。

そうした原点に戻ってください。それによって多くの困難や壁を乗り越えることが出来るでしょう。自分がやっているスポーツが大好きになるときもあれば、大嫌いになることがある。それは時には簡単なことではない。だからこそ、時には初心に帰ることが必要なのです。

●目標設定( Goal Setting )
一流選手は長期目標、中期目標、短期目標、今日の目標を持っている。
一流選手の目標は、国内で勝つことやオリンピックのような海外の大きな試合で勝つことである。しかし私がそうした選手に会ってまず聞くことは、今日何をしたいのか?今何をするのか?ということです。大事なことは今なのです。
今やっている練習が遠い目標につながっていることを理解することです。

●質の高い練習( Quality Practice )
この講演が始まってから集中力を無くした人はいませんか?
今から30秒間、全力で集中力を高めてください。すべてのテクニックを使って集中力を高めましょう。さあ、みなさんは15秒前とは全く違った集中力を発揮しているはずです。
何をして集中力を高めましたか?
私を見て目を使って集中した人もいるでしょう。
耳を使って意識を集中した・・・。
頭のことで考えて集中した・・・。
体を動かして・・・

試合でピークパフォーマンス(最高のプレイ)を発揮するということは、集中力をいつも、いつも最高に高めるということではありません。ミスをした時に、気持ちを切り換えて集中力を回復させる( Coming Back )ということがピークパフォーマンスにつながるのです。完全なプレイというものはありません。集中力を回復させたり、気持ちを切り換える(Re-focusing )ことで最高のプレイに近づくのです。

宇宙飛行士にもメンタルゲームを教えることがありました。宇宙飛行士の3人に1人は、宇宙空間に行くと気分が悪くなったり、集中力を失ったりすることがある。しかし、気分が悪かろうが、調子が悪かろうが宇宙での仕事はしなければならない。気分が悪いときにこそ、どうにかして仕事を上手くやる方法を学ばねばなりません。調子が良いときはこうする、調子が悪いときはこうするというトレーニングをしておかねばなりません。
( Apolo 13号 という映画を見てください)

 私が大リーグのロサンゼルス・ドジャースで指導していたとき、二人の有名な投手(ケビン・ブラウンとハーシュワイザー)がいました。その二人に、試合では何%ぐらいの確率で最高の心理状態(ゾーン)に入ることが出来るか聞きました。彼らの答えは20%ぐらいということでした。ということは試合の80%はメンタルで集中できないときなのです。その調子がよくないときに、いかに集中力を取り戻すか、気持ちの切り替えをするかが大事なのです
 調子が悪い時を、調子が良いときに近づけていく。そのためには、練習・練習・練習しかないのです。どんな練習なのでしょうか?それは集中した練習です。
ただ回数を多くこなす練習ではなく、試合で起こることを想定した質の高い練習です。
ただただ量をこなす練習、練習のための練習ではなく、試合のための練習をしてください。(実技が入る)

●心理的準備(Mental Preparation)
 6時から試合や練習があるのなら、6時までに心の準備やルーティーンを100%しておくことが必要です。長谷川滋利がよく深呼吸をしているのを見たことがあるでしょう。イチロー選手がバッターボックスでバットをまわすルーティーンも有名ですね。これは、コンスタントに実力を発揮すことにつながるのです。ルーティーンは、調子が悪いとき、気分が悪いときにこそ、いきてきます。

●集中力・集中力の回復( Distraction Control )
 あなたのまわりには集中力を邪魔するもの( distraction )があると思います。それを、いかにコントロールできるかです。また集中力がなくなったときに、気持ちを切り換えて集中力を回復するということが大切です。それが、オリンピックでメダルが取れる選手と取れない選手の違いです。心を乱すものを上手くコントロールして集中できるか、出来ないか?その違いです。

 スポーツ選手には、コントロールできないものがたくさんあります。
群衆、審判、相手のチーム、天候はコントロールできません。
陸上のタイム(結果)もコントロールできません。
あなたがコントロールできるのは自分自身だけです。
自分の態度や努力はコントロールできます。
自分がコントロール出来ることと、出来ないことを認識して、自分が出来ることに意識を集中することが自分を邪魔するものを取り除いて集中力を高めることにつながるのです。

自分の邪魔になるものを短時間で、振りはらい集中力を高めることが大切です。
先ほど30秒で集中力を高めることを練習しましたね。

さあ、それでは今から2時間集中してください。用意してください、・・・・・・さあ・・・
・・・・そんなことは出来ませんね。

しかし集中力がなくなっても、回復させたり、気持ちを切り換えることは出来ます。そのためのテクニックを持つことが大事なのです。

今この教室に誰かが入ってきたとします。あなた方がその人の方を見たとしたらそれは集中力を欠いたことになります。私の話に集中していたら視線をそらすことはないのです。そうならないトレーニングをする必要があります。メンタルトレーニングををするということは24時間全て使ってトレーニングするということです。

●イメージを使うことの大切さ (Imagery )
不安を取り除くために、集中力を高めるために、ケガをして練習できないとき、イメージトレーニングは有効です。片腕のアスリートを3人指導したことがあります。(大リーグの選手、ジム・アボット・・・)片腕の選手達も、両腕がある選手を見てイメージを作って、腕が2本あるかのようにプレイすることも出来ます。

オリンピックのフィギュアスケート選手の例。大会前、イメージトレーニングのタイムをストップウオッチで計って準備させた。自分の演技と同じ時間でイメージトレーニングが終わるように。これが出来て試合の準備が出来たということなのです。

●評価(反省とチェック)
オリンピック選手はみんな、自分のプレイを反省して次につなげようとします。
ミスをしたとき、失敗したときこそ、成功へのプロセス、学ぶチャンスです。あなたは最後の練習で何を学びましたか?コーチは、最後にした指導で何を学びましたか?
私が一流選手から学んだことは、彼らはいつでも学ぼうとしているということです。

(6)外科医から学ぶ
(Lessons learned from surgeons)

  • 準備
  • 今やるべきことに意識を集中する
  • コミュニケーション
  • 評価
 5年前、500人のコーチにメンタルトレーニングの講演をしました。その時、1人の外科医が来ていました。心臓外科の医師です。彼は、私の「一球一球に意識を集中する」という話が彼の仕事に大変参考になったと言いました。彼は心臓移植では12時間から14時間連続して手術しなければなりません。そして手術の最後に4回、大事な縫合があるそうです。それに失敗すると患者は死んでしまうそうです。大変なプレッシャーです。「手術の一針一針に集中する」のは野球の「一球一球に意識を集中する」のと同じです。

手術の前には必ずミーティングをして準備するそうです。人の顔が一人一人違うように心臓の形も手術も毎回違うそうです。試合も同じことが言えるはずです。
手術着に着替えると、集中力が高まり戦場に赴く侍のようになるそうです。
手術が終わるとまたミーティングがあり、評価をして次の手術に活かします。
選手も試合が終わるとコーチとミーティングをして、コーチからの情報(アドバイス)を受け入れる気持ちが大切です。

もし、手術をした患者さんが死んだらどうしますか?と聞くと、その患者さんは私に命をくれたのだと答えました。つまり、その経験を生かして次の手術で別の患者さんの命を救うという意味なのです。次の手術は絶対成功させるということです。
一流の選手、コーチほど、ミスをしたり失敗したことから多くのことを学びます。

(7)なぜメンタルゲームが必要なのか?
(Why Mental Game?)
Mental Game=Mental Training

  • 大切な試合において重要なのは
  • 心(   %) 身(   %)ですか?
  • 自分との戦い(相手ではない)
  • レベルが高くなると身体的なものは変わらない。そこで変わるのがメンタル面である。
  • 昨シーズン、あなたは何回自分に打ち克つことが出来ましたか?
  • 何回、ピチャーに負けたのではなく自分に負けましたか?だからこそ、メンタルゲームが必要なのです。
  • エンジェルスで指導したとき、200人以上の若い選手がメジャーリーグに上がろうと努力していた。その中からメジャーに上がれるのは10人いるかいないか。身体的能力や技術は差がない。メジャーに上がれるか、上がれないかの差はメンタル。
(8)選手の言葉

 ピネラ(Pinella)
  • 彼は競技者になれないだろう
  • なぜなら、彼は自分の気持ちをコントロールできないからです。
 ジョーン・ウーデン(John Wooden)
  • 自分が出来ることに対して。これは出来ないかも、などの気持ち(考え)を持たないこと。
 ロイ・キャンパネラ(Roy Campanella)
  • あなたは自分の生活のために野球をするかもしれない。
  • しかし、あなたの心のなかには少年のような気持ちがいっぱいあるはずです。
 子供が夢中で遊ぶのは面白いから。3歳の子供がおもちゃで遊んでいる。遊んでいるときはわき目もふらず非常に集中して遊んでいる。その気持ちを忘れないこと。

(9)質の高い練習
( Quality Practice )

 ここで学ぶメンタルゲームは、練習だけで使うものではない、勉強や、人生の生活で使うこと、その方が大切である。
  • 準備
  • セルフコントロール
  • 今現在に意識を集中する
  • 目的に対する熱心さ
  • 真剣な気持ちと情熱(熱い気持ち)
 青信号の時、黄信号のとき、赤信号の時。
 プレイするとき、どの状態かを考えてプレイすることが大切です。
 ( 学生を前に出してのデモンストレーション )
 マイナス思考や集中力の邪魔をするものが現れたとき、それは黄色信号が点灯したのと同じ。その時こそ自分をコントロールする。

(10)質の高い練習に対する心理的準備
 Mental Preparation for Practice
  • 練習を始めるとき
  • 一つ一つの動作に意識を集中する
  • 練習に対するルーティーン
  • 練習に対する準備の概念
 練習に対する準備。

 練習と学校生活を分けて考えなければなりません。体のウオーミングアップの前に心のウオーミングアップをしなければなりません。3時から練習があるなら、3時までに完全に準備しておかなければなりません。

 気持ちを切り換えて、集中力を高める準備。学生は、授業が終わって、ロッカールーム(更衣室)に入り、制服を脱いで、ユニフォームに着替えるとき、今日の学校での出来事を、すべて制服と一緒に頭から脱ぎ捨てて、更衣室に置いてくることです。練習着に着替えた瞬間に、あなたは、アスリートに変身するのです。

 心臓外科医が手術着に着替えたときと同じで、選手も練習着に着替えたときに、自信を持ってスポーツ選手になりきらなければなりません。

 真剣な気持ちと情熱を持って今現在に集中します。試合ではみんな熱い気持ちで燃えてゲームをします。しかし試合より練習の方が時間は長いはずです。試合と同じように、熱い気持ちで燃えて練習しなければなりません。

(11)バランスが必要
( Must Balance )
  • 反復と質の高い練習
  • 内的集中と外的集中
  • チームと個人
(12)試合でやるべきことを練習する。
( Practice What you will do in the game. )
  • エラー(ミス)をした時に、何をすべきかの練習
  • 試合に途中から出るとき
  • 試合のルーティーン(試合シミュレーション)
  • 選手のチエック(気持ちなど)を練習中にする
  • タイムアウトなど短い時間の使い方
  • コーチのハーフタイムの使い方(30秒の集中など)
(13)講演会後の懇親会で話されたことから
  • 「自信とは勝つことによって生まれるのか?
    それとも自信がついたから勝てるのか?」
    のような議論がよくあるが、あなた方はどう思いますか?
    勝つ人間は一握りである。陸上競技などでも1位には
    1人しかなれない。みんな勝つことにチャレンジ(挑戦)して
    いるのである。勝てない時、結果が出ないチャレンジの過程の中でも
    自信を持つこと、持たせることが、メンタルゲームの目的である。
    負けたとき、調子が悪いときこそが、大事なのである。
    野球のバッターは10回のうち7回失敗しても3回ヒットを打てば一流である。
    我々にとってメンタルゲームが必要なのは、失敗したとき、結果が出ないときである。そういう時にこそ、いかに自信を失わないかが大事であり、
    勝つことだけが目標ではない。
    勝ってダメになるチームもあれば、負けて成長するチームもある。
  • 一般的には、男性は、勝つことによって気分が良くなり
    女性は、気分がよいときに勝てる場合が多い。


まとめ:
6年前に講演を聴いたとき、自分は、それほど深く理解していなかったことに今日気付
きました。6年前は、試合で最高の結果を出すためのメンタルのことばかり考えていま
した。今回ケンが何回も何回も繰り返して強調していた言葉がありました。
それは、メンタルトレーニングは、ピークパフォーマンスを目指して、最高の心理状態を
作ることだけが目的ではないということです。
ピークパフォーマンスは一流選手ですら、10回に2回あるかないかです。
調子が悪いとき、ミスをしたとき、気分が悪いとき(feeling uncomfortable)にこそ、気持
ちの切り換えをして、気分を良くして(be comfortable)、集中力を高めること、
それが、Mental Game だということです。

私が、直筆で頂いたメッセージでも、そのことが強調されていました。

講習会の中では30秒の集中力回復練習を何回か実施しました。試合や練習中だけ
でなく、生活の様々な場面で集中力が切れそうな時ほどトレーニングをしていく必要が
あると思います。

講演を聴かれた方々が、日々の実践の中で、今日学んだことを活かしていかれること
を期待します。

今回ケン・ラビザ博士を招待するのに、ご尽力された高妻先生、西貝先生に深く感謝い
たします。

この報告の内容を無断でコピーして配布したり、営利目的で使うことを禁止いたします。

              大塚高等学校陸上部 N.TAKEDA

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